全体に比較的繊細な感じ(主軸は230マイクロメートル程度)のフラスコモです。
下の2015年の写真は滅菌した培地(土)に発芽した卵胞子を置いて一ヶ月ほどのもの。まだ成長途中で形も安定していない(小枝がひょろひょろ長すぎる)と思われます。
逆に水槽で密生していじけてくる(栄養が足りない?)と、こんな感じ。どちらにしろ小枝は2〜3回分枝します。
最終枝は2細胞で先端の細胞が小さく尖っているのが基本ですが、1細胞のもの(写真のような、トゲ状が基本?)、3細胞のものもあります。
(古くなってくると?)最終枝先端の細胞はこのように脱落していく場合も多いようで。
この写真だと半分ぐらいの最終枝は先端の細胞が残ってますが、ほぼ無くなっている部分もありました。
雌雄同株で
造精器は直径270マイクロメートル(1個だけ測定した値です)
生卵器は長さ420マイクロメートル、幅285マイクロメートル(同じく1個だけの測定)、
単生(一カ所に一組だけ付く)、まれに双生。らせんは7本。
雌雄同株ですが、雄性先熟なのか、ほとんど造精器しかないときもありました。おっちょこちょいな私は雌雄異株と勘違いしそう(右の写真は矢印を入れた2つだけ生卵器)。
卵胞子の長さ260マイクロメートル、幅210マイクロメートル(6個の平均)、らせん縁は顕著で5本。
卵胞子膜は平滑。日本淡水藻図鑑によれば 一見平滑だが1000倍(油浸レンズ)で観察するとデリケートな粒状模様が見えるのがナガフラスコモ Nitella Orientalis の卵胞子膜、シンフラスコモはこれとほとんど同じとのこと。
下の写真は600倍で観察したものですが、なんとなあく、でこぼこが見えてくる気がしないでもないでしょ?
(実際はノイズのたぐいが模様的に見えてるのだと思います)
日本淡水藻図鑑と大きく相違するのが卵胞子の色とらせん縁の数。
図鑑には色が「暗褐色ないし黒色」、らせん縁は「頗る顕著で3〜4本しかない」。
卵胞子だけ見ればシンフラスコモより、上にも出てきた近縁種のナガフラスコモ(淡黄褐色、5〜6本)の方になりそう。
でもナガフラスコモの最終枝は3細胞のは無く、分枝回数も3〜5回とのことで、、、。
微妙な所ではありますが、ここは日本淡水藻図鑑の検索表にしたがって(最終枝の細胞数や小枝の分枝回数を優先して)シンフラスコモとしておきます。
キヌフラスコモとシンフラスコモは、ナガフラスコモのシノニム(異名:同じ種だっていうこと)という見解がある(柴田らによる学会発表,藻類59:75(2011))ようで、それに従うならナガフラスコモとするのが妥当なのかもしれません。
が、そうすると最終枝の細胞数や小枝の分枝回数は種の同定に使えないという話になり、結局なにかと日本淡水藻図鑑に頼っている私としては困ったことになります。
と、いうわけで新しい知見に基づく改定(この件に限らずいろいろあるようです)はアマチュア車軸藻愛好家がよりどころにできる新しい図鑑が出てから(出るのか? 出たとして買えるのか? 全面的に見直すのはかなり骨だぞ などと思いつつ)ってことで、悪しからず。