「シャジクモ亜科(シャジクモ属・シラタマモ属・ホシツリモ属)」と
「フラスコモ亜科(フラスコモ属)」の違い
その1 分枝
小枝(しょうし・輪生枝(りんせいし)ともいう)はシャジクモ亜科(シャジクモ属、シラタマモ属、ホシツリモ属)では枝分かれ(分枝(ぶんし))しません。
フラスコモ亜科(フラスコモ属)の小枝は1〜数回分枝します。
ミルフラスコモの仲間のように、一見分枝していないように見えるのに、ルーペで見ると小枝先端がちょこんと分枝しているフラスコモもいますので注意。
その2 生殖器の配置
車軸藻類は生卵器(せいらんき)と造精器(ぞうせいき)を作りますが、両方が同じ節につく場合、シャジクモ属は生卵器が上、フラスコモ属では造精器が上につきます(シラタマモ属は付き方がいろいろで、ホシツリモ属は雌雄異株なので同じ節に付くことはありません)。
シャジクモの生殖器 と シンフラスコモの生殖器
その3 小冠細胞
生卵器のらせん細胞先端には小さな細胞・小冠細胞(しょうかんさいぼう)がついています
シャジクモ亜科(シャジクモ属、シラタマモ属、ホシツリモ属)ではこれが、らせん細胞1個につき1個(生卵器全部で1列5個)、フラスコモ亜科(フラスコモ属)では2個(生卵器全部で2列10個)です。
その4 皮層
皮層とは主軸や小枝をとりまいて発達する細胞です。
シャジクモ属はおおむね皮層を持っています(「シャジクモ」など、皮層のないものもいます)。
他の3属は皮層をもちません。
ヒメカタシャジクモ?の小枝先端。先端の2細胞以外は細長い皮層の細胞にとりかこまれています。
その5 托葉冠と苞
托葉冠(たくようかん)は小枝(しょうし)の根元に下のようにつきます。
根元ではなく、小枝の節から出るものは苞(ほう)といいます。生殖器の付け根・外側から1対のびる苞は小苞(しょうほう)、造精器がつかない場合、その位置から1本のびる苞は下苞(かほう)といいます。
托葉冠、苞はどちらもシャジクモ属・シラタマモ属にはありますが、ホシツリモ属は托葉冠を持たず、フラスコモ属には両方ともありません。
その6 卵胞子
生卵器の中の卵細胞(らんさいぼう)が、造精器が作る精子と結合して卵胞子(らんほうし)ができます。卵胞子はシャジクモ属・シラタマモ属では円柱状(断面が丸い)ですが、フラスコモ属のものは碁石状(断面が長円形)です。ホシツリモ属の卵胞子はほぼ球形だとか。
卵(らん)+胞子(ほうし)という、よく分からない名称ですが、藻類などでよく使うそうで。
卵と精子の結合したものなら受精卵だし、もっと一般的に接合子(せつごうし)でよいのでしょうが、硬い殻(卵胞子膜(らんほうしまく))を持っているし、その殻の外側は親由来(この後説明)なので、特別な名前が付くということだと思っています。
卵胞子の大きさは種によってほぼ一定なので、車軸藻類を同定(どうてい・種名をつきとめること)する際の重要な材料の1つになります。
卵胞子の表面は、らせん細胞の内側と卵細胞の表側から出来る通常4層からなる膜(卵胞子膜)で出来ています。その表面の2層に種によって異なる様々な模様があり、この模様や(それに伴う?)膜の断面構造が種の同定には決定的な要素となるようです。また卵胞子膜からは、らせん縁(えん)という、らせん細胞の内側がらせん状に残ったものが出ていて、種によって単なる筋状だったり膜状に広がっていたりさまざまです。